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               黙想練習                               シュルツ / ルーテ 著


 黙想練習を行なうには、あらかじめ自律訓練標準系列を完全に修得している必要がある。練習者は、次の公式によって有効かつ即座にさまざまな標準練習に切換えることがでぎるようになっていなければならない。



  「1:腕と足が重たい・・・・(楽な気持がする)・・・・・  2:鼓動が落ちついて規則的だ・・・ 3:楽に息ができる・・・・
  4:太陽神経叢が温かい・・・・・  5:額が涼しい」



準備訓練



 実際に黙想練習に導入する際には、それに先立って訓練期間が必要である。
 その期間に練習者は自律訓練の技術を増進させ、かなり長時間(例、35―60分)にわたり自律的状態で安定していられるようになるまで訓練を行なう。
 自律性状熊の心理生理的安定性は、内的刺激(例、自律性解放)あるいは環境的刺激(例、騒音、照明)によって防げられるから、自律的練習を続継することを学習し、環境的な妨害によっても自律的状態を保てるようにするのが準備訓練期間の目的である。
 通常、これを始めるのによく用いられる方法として、様々な照明状態(例、昼光、直射日光、暗所、明るい照明)で標準練習を行なう。
 後期には練習者の顔に直接照明をあてて行なれる。
 最後には、治療または他の人が練習中に光を点滅して、練習者の自律訓練技術の強化を助ける。

 同様のアプローチが練習者の聴覚刺激のトレランスを強めるために用いられる。
 新聞紙をガサガサいわせるとか、手を打つとか、ラジオの音を出すとか、目覚まし時計を鳴らすとかいった妨害音が用いられる。
 練習者の自律訓練技術を強化することは、習慣的に好ましくない状態とか、特殊な環境(例、飛行中、戦闘中、尋問、捕虜収容所、)で起こるストレス状況下で受動的注意集中が適用されるために特に重要である。

 もう1つの自律的接近(標準練習をマスターした後で導入されるのがふつう)は、時間感覚の訓練に焦点をあわせたものである。
 経験的観察と実験研究から、多くの人は、昼間の時間あるいはあらかじめ決められた時間に、目覚まし時計なしに目を覚ますことを、本能的に決めることができるといわれている。
 時間感覚と時間に関する心的機構は、ある特定の時間に起きることを練習すれば、正確に実行できる。
 これは、その時間を毎日変えた方がよい。2〜3週間の受勤的注意集中訓練で、かなりよい結果が見られる。



 ある特定の時間に起きるという受動的注意集中は、標準練習に加えて行なわれるベきである。 そして、就寝前最後の(標準)練習のところで行なうのがよい。意志訓練公式で、受動的注意集中の時間は、長くても30〜60秒を越えてはならない。  約50パーセントの練習者で、意図した時間に起きており、その分散も、第1試行で2〜3分にすぎない。
 他の26パーセントのものは、初めは成功しなかったが、後にはよい結果を得たようである。
 約20―30パーセントのものは、時間惑覚訓練に失敗しており、積極的な結果は稀にしカゝ見られない。
 多くの練習者が、自分の使い慣れた時計をもって、起きようとする時間を指しながら意志訓練公式を行なうことによって、最善の結果が得られたと報告している。 また他のものは、標事練習の最終段階で、起きようとする時間を目の前に大書するのがよいという。
 毎晩時間を変えてみるとよいようである。
 多くの症例で見られることであるが、何度も失敗すると、意志訓練公式を「今晩私は・・・・時に起きたい」等と変えていることがある。
 しかし、このようなやり方は目標指向的なもので、受動的注意集中の原則とは相入れないから、やめさせるべきである。  多少とも意図的に行なおうとする練習者は、ほとんど成功しない。
 彼らは、不眠症になったり、ちがう時間に頻繁に目を覚ますといった罰を自動的に受けるのがふつうである。
 このようなことを避けるには、受動的であり続けること、および楽な気持で時間感覚の訓練に臨むことが示唆されよう。



第1黙想練習: 色彩自発経験



 黙想訓練系列の最初は、色彩の自発的「視覚」経験である。
これには、約30〜60分の長時間の練習が必要である。
 2〜4週間の訓練の後、練習者は、初めにさまざまな無彩色視党カゝら始まって、最終的にはその「視野」に優位な特定の色彩(例、青、赤、黄など)を、自発的に「見る」ようになる。
 ある色を自発的に経験すると、「自分」の色を、より規則的に、より容易に見ることが急速にできるようになるのがふつうである。 練習者が、たとえば、ふつう見る青のかわりに赤を見たい、と思ってやってみる(これはやめさせた方がよい)ようなことがないがぎり、同じような色彩を経験することが多い。
 この黙想過程の発展は比較的緩慢で、個人差が大きい。
 多くの観察によると、最初に見やすい「標準的な色」というのはないようである。
 青い感じの色が最も多いが、個人個人その人に特別の意味をもった色彩を経験する傾向がある。



第2黙想練習: 特定色彩経験



 導入セッションでは、患者はセラピストにより示唆される様々な色を「見ること」を練習する。
 練習者が最初の黙想練習で、自発的に、最も頻繁に「個人的色彩」を経験するようになったところで、セラピストによって示唆された色彩が出てくるようになる。最初は、色のついた様々な個人的色彩が、他の色よりも容易に経験される。たとえば、赤がその前の練習で頻繁に経験されている時、「オレンジ、黄、銀色、灰色」のようなものでも、「紫、青、青緑、緑」のようなものでも、どちらでもよい。
 治療者によっては、2、3セッシ。ン指示を受けると、練習者はスーパービジョンなしにこの練習を行なえるであろう。
 ふつう、ある色彩が他の色彩に比べてむづかしいことがある。
 このような困難さを克服するには。
 ある意味をもったイメージと関連させて、その困難な色を先づ「見る」ようにさせるとよい。
 たとえば、緑を経験するのが困難な練習者は、緑が十分よく「見る」ことができるまで、草に寝ころんで木を見上げているところを生き生きと思い浮かベればよい。
 このような意味のあるイメージを規則的に用いることによりて、練習者は最後には、困難なくある特定の色を経験することを学ぶであろう。
 しかしながら、この練習を行なっている間は、イメージとか対象に力点が置かれるべきでなく、先づ、ある色彩が強調されるべきである。
 それが霧とか雲とかの漠然とした形をとって視覚化することが望ましい。

 紫、赤、オレンジ、金色、黄、はしばしば温かさの感覚を強化する効果をもっといわれている。青はしばしば前額の冷涼感の増加と、患者を安静する効果があるようである。
 黒と暗い紫は、不快な連想と抑うつ感をひき起こしたり、「非常に疲れた感じ」あるいは一般的疲労と結びついた症状と関係しているようである。
 練習者が受動的注意集中を行なっている間に色彩が思いのままになるのには、ふつう2〜16週間の規則的な訓練が必要である。



第3黙想練習: 具体的対象の視覚化



 2、3人の練習者は具体的対象を視覚化するのに全く困難を感じないが、そのイメージは不明確で、「様相」はふつう短時間の漠然としたものである。
 ある対象の特定部分のみを見る傾向のあるものは、全体像が規則的かつ明確に視覚化されるまでに、2、3週間かかるのが普通である。標準手続としては、練習者は完全に受身の態度(一般に具休的対象に焦点をあわせる)で、対象が自発的に現われてくるのをただ待っているように助言される。何週間かたつと、次第にその対象が、より容易に、より明瞭に現われてくるようになり、イメージはもはや薄れてしまう。
 この訓練期間の進歩は、色彩の視覚化に比べて、ふつうかなり緩漫で、時間がかかり(40〜50分)、忍耐を要する。
 次の黙想練習は、練習者が具体的対象を明瞭に容易に見るようになるまでは行なうべきでない。



第4黙想練習: 抽象的対象の視覚化



 第4黙想練習を行なう間、練習者は「正義」、「自由」、「幸福」のような。
 抽象的対象に心を集中する必要がある。 人によって異なった経験が報告されるであろう。
 あるものは色のついたフィルム様のイメージを経験することがある。
 それは、しばしば妖精のような性質で、極端に「未だかって知らない」までに美しいので、ふつうの空想よりもすぐれている。
 他のものは、単に1枚の紙に印刷された黙想対象の名前を見るだけであり、シネラマのような表象は経験しない。
さらに他のものは、大声で「正義・・・・・正義 ・・・・・」とくり返す声のような、聴覚現象を経験する場合もある。
 彼らの経験を記述しようとして、練習者は「天使の歌う讃美歌」、「妖精の国の音楽会」、あるいは「天球の音楽」といった表現をとる場合がしばしばある。
 さらに他のものは、シンボルと寓話の世界に入る。
 これらの現実を超越した黙想練習は、心理治療の観点からすると、特に興味あることである。
 夢の材料を用いるのと同じく、練習者の黙想経験は、セラピストにとっても、練習者にとっても価値のある情報を含んでいる、比較的十分な自己統制をしている批判精神のある練習者は、彼らの黙想経験を、自己浄化的方向に向けることができる。



第5黙想練習: 特定感情状態の体験



 習熟した練習者が一定期間(2―6週間)抽象対象の経験に重点をおきながら練習した後、第5黙想練習に移る。
 この段階で練習者は、次第に黙想訓練の意図に対応した心理生理的態度を経験できるようになってくる。
 訓練時間を延長し(30―印分)、その間、広々と視界の開けた海を眺めている際に経験するような概括的感情状態に受動的注意集中を行なわせる。この練習では、過去における経験や、練習者の願望が現われてくる傾向がある。
 このような体験は、広範にわたり、それぞれ異なった現われ方をする。 しかしながら、ほとんどの症例で、この黙想練習での体験は、シネラマ様のイメージ(例、山の頂上に立っている、月にいる、雲の上を飛んでいる、日の出を見てしいる。)に伴って現われる。
 通常、原型的形態や宗教的テーマおよび強い願望が多く現われる(例、子どもを欲しがっている女性が子供を視覚化したり、嬰児に授乳している場面を想像したりする娘向がある)、また、時には色情的、性的テーマが鮮明に現われることもある。 しかし、練習者の身辺や、過去において関連の深い特定個人が明瞭に視覚化されることはまれである。



第6黙想練習: 人物視覚化



 これまでの訓練段階が自己中心のテーマであるのに対し、ここでは、他の人物に受動的注意集中を行なうように練習する。
 初めは、比較的 「中性的な」 人物(例、郵便屋、守衛)を選んで練習するのがよい。
 その理由は人物視覚化は個人的な感情の色彩が濃いほど、より困難になることが観察されてきていることにある。
 多くの練習者にとって、この練習は難かしいと感じられる。
 心像は不鮮明であり、消え易いという、その一方のいずれか、、または両方の傾向があるからである。
 しかしながら、数週間(時には数カ月間)練習を続けると、心像は鮮明になり、持続するようになる。
 そして遂には、丁度夢の場合のように、現実のすべての特徴を具えるようになる。
 さらに訓練が進むと、練習中に心像視している人物に対する関わり方や態度が好ましいものになってくる。
 これはおそらく、強く愛している人物の心像を想起することが、非常に難しいためであろう。
 練習者の報告によると、一般に敵意や不快感を感じている人物の視覚化の方がはるかに易Lい。
 その場合、しばしば戯画化された特徴が現われその人物に対する練習者の態度ここ応じた或る象徴的な活動が現われるか、またはその一方のタイプである。
 このような経験は、練習者の態度における 「自己分析的」 変化を推進するようである。
 このことは練習者を、従来よりー暦現実即応的にし、かつ情緒的色彩を減少させる。



第7黙想練習: 無意識からの応答



 黙想練習系列の最終段階で、練習者は「私は何を求めているのか(what do I want ?)」とか、「私にやましいところはないだろうか(What do I do wrong ?)」というような問いに受動的注意集中を行なう。
 そこで経験される内容はさまざまで、練習者の心理力動的布置に関係が深い。神経症的な練習者ではほとんどがコンプレックスに関係した内容である。



練習効果の報告



9月30日 (236日目)  23:30

正常な訓練徴候。

無意識からの応答:私はここからどこへ行くのだろう。(where do I go from here ?)

これにはまったく何の反応もなかった。 (リラックスした状態で約20分統けた。)



10月1日 (237日目)  23:15

正常な訓練微侯。

無意識からの応答:私が最も怒ることは何か。(What do I resent most ?)

私は洞穴の中に坐って、日光が射し込んでくる入口の方を見ている。何事も起こらない。 その薄暗いところに坐って、薄暮を見ているところ。 (時間約20分)



10月2日(237日目) 23:45

正常な訓練徴候。

無意識からの応答:どうすれば良くなることができるか。(How can l achieve my own improvement ?)

私は地面に横たわっている。 大きな木が私から生えて伸びて行く。 この像は5分ほどしてから現われ、中断されずに最後まで続いた。



10月3日 (239日目) 23:00

正常な訓練徴候

無意識からの応答:私はまだ自分をあざむいているのか。(Am I still kidding myself ?)

昨夜の練習が―連の考えを展開させた。 私の体から一本の木が生え出し。 私の体は丁度大地の―部のようだった。 これは、私が大自然の―部であるベきであり、私自身をその法則や秩序に従わせるベきことを意味している。 これはまた、いわば「自由の応答」でもあろう。
 自由意志などありはしないのだ。 私の自然の本性と、より高次の秩序に従わなければならない。

 練習中、10分ほど経ったところで、次のようなイメージが現われた。

 私はまっすぐ立っている。
 胃の部分から非常に沢山のヒモやリボンが、吹き流しのように出てきており、何物にも縛られないで、ヒラヒラと翻っている。(時間約30分)


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